- 自分は怒りっぽいと思う
- つい人に怒ってしまう
- イライラしてパートナーに当たってしまう
イライラしてつい怒りっぽくなってしまう、子供やパートナーに怒りをぶつけて自己嫌悪…こんなお悩みはありませんか?
「怒り」は人間の基本的な感情の一つです。適切にコントロールしなければ、私たちの心身の健康や人間関係に深刻な影響を与える可能性があります。この記事では、なぜ人は怒るのか?を科学的に解説し、効果的な怒りのコントロール方法を紹介します。
1.脳科学からの視点から見る怒りの仕組み
1.1 扁桃体の役割
扁桃体は、外部からの刺激を「嫌だ」と認識し、怒りの感情を生み出す重要な役割を果たします。例えば、誰かに無視されたと感じた時、扁桃体がその状況を脅威として認識し、怒りの感情を引き起こします。
1.2 前頭葉の制御機能
前頭葉、特に腹内側前頭前野は、怒りの感情をコントロールする役割を担っています。この部位が適切に機能することで、怒りの衝動を抑え、より冷静な判断を下すことができます。
2. 怒りが引き起こす生理的反応
- 心拍数の上昇
- 血圧の上昇
- 筋肉の緊張
- 呼吸の速さの増加
- 交感神経系が刺激されることによるアドレナリンの分泌
- 脳や筋肉への血流が増加し、消化器系への血流が減少
これらの反応は、私たちの祖先が危険な状況に直面した際に、「闘争か逃走か」の反応を起こすために進化してきたものです。
動物や人間が危機的状況に直面した際に示す生理的・心理的反応のこと。この反応は、危険に直面した際に生存に有利に働くよう進化してきたと考えられています。しかし、日常的にストレスを感じ続けると、不眠やうつ症状などの健康問題を引き起こす可能性があります。
近年の研究では、この「闘争か逃走か」反応が主に男性に当てはまるものであり、女性の場合は異なる反応を示す可能性が指摘されています。
3. 怒りが健康に与える影響
3.1 身体的影響
- 高血圧
- 心臓病のリスク増加
- 免疫系の機能低下
- 慢性的な頭痛や筋肉の痛み
3.2 精神的影響
- ストレスの増加
- 不安障害や抑うつのリスク増加
- 睡眠障害
- 集中力の低下
4. なぜ人は怒るのか?怒りの原因
- フラストレーション:目標が達成できない、期待が裏切られるなど
- 不公平感:不当な扱いを受けたと感じる
- 恐怖や不安:自己防衛の一形態として
- ストレス:日常生活における慢性的なストレス
- 疲労やイライラ:身体的・精神的な疲れ
- コミュニケーションの問題:誤解や意思疎通の不足
- 期待値が高い:他人に対する期待値が自分が思っているより下回っていた
例えば、交通渋滞で予定に遅れそうな時、私たちは目標(時間通りに到着すること)が達成できないフラストレーションから怒りを感じることがあります。
パートナーとの関係性で例えると、相手にもっと優しくしてほしいという思いとは裏腹に、約束が破られたり、冷たくされることで「不当な扱いを受けた」と不平不満が溜まると怒りを感じやすくなります。
5. 怒りをコントロールする方法
5.1 深呼吸法
怒りやストレスを感じると、呼吸が速く浅くなります。深呼吸は、交感神経の興奮を抑え、副交感神経を活性化させる効果があります。
- ゆっくりと鼻から息を吸い、5秒間かけて腹部を膨らませる
- 2秒間息を止める
- 7秒間かけて口からゆっくりと息を吐き出す
- これを5回繰り返す
5.2 認知の再構成
認知行動療法(※1)の一技法である認知の再構成は、怒りを引き起こす思考パターンを識別し、より適応的な思考に置き換える方法です。
- 怒りを感じた状況を具体的に書き出す
- その状況で生じた自動思考(※2)を特定する
- その思考の妥当性を検証する
- より適応的な代替思考(※3)を考える
例えば、パートナーがデートの約束の時間に遅れてきた場合
自動思考:「この人は私を軽視している」
代替思考:「何か予期せぬ事態が起きたのかもしれない。理由を聞いてみよう」
(※1)認知行動療法(CBT)は、行動科学と認知科学を臨床の問題に応用した心理療法の一種。
(※2)自動思考とは、ある出来事に対して瞬間的に浮かぶ考えやイメージのこと。例えば、意識せずに自然と生じる「考え方のクセ」のようなもの。
(※3)代替思考とは、認知行動療法において用いられる技法の一つで、ネガティブな自動思考を別の、より適応的な思考に置き換えること。
5.3 タイムアウト
怒りが高まった時は、その場を離れて冷静になる時間を取ることが効果的です。
- 怒りを感じたら、その場を離れる
- 深呼吸や軽い運動をして気分を落ち着かせる
- 冷静になってから状況を再評価する
5.4 アサーティブなコミュニケーション
自分の気持ちや要求を適切に伝えることで、怒りの感情をより建設的に表現できます。具体的には、自分の意見や感情を率直に表現しつつ、相手の意見や感情も大切にすることが求められます。このようなコミュニケーションは、対等な関係を築くために重要です。
- 「私は〜と感じる」という形で自分の気持ちを伝える
- 具体的な状況や行動を説明する
- 相手に望む行動を明確に伝える
例えば、パートナーがデートの約束の時間に遅れてきた場合
「私は約束の時間に遅れてこられると、大切にされていないように感じます。次回は時間通りに来てもらえますか?」
アサーティブとは、自己主張をしながらも相手を尊重するコミュニケーションスタイルを指す。
5.5 定期的な運動
運動は、ストレスを軽減し、怒りの感情をコントロールするのに役立ちます。週に3回、30分以上の有酸素運動を行うことで、怒りの感情が軽減されるという研究結果があります。
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
生きていると、怒りは自然な感情です。しかし、時に、人間関係を破綻させることもあります。人は感情をコントロールできます。怒りを感じるとき、どんなことに怒りを感じたのか、内省することも、今後の怒りの感情をコントロールするスキルとなります。
定期的に怒りのコントロール方法を練習し、自分に合った方法を見つけていくことが、心身の健康と良好な人間関係の維持につながります。
【参照サイト】
https://www.town.nasu.lg.jp/manage/contents/upload/62a92d3b8e4a4.pdf
https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2023/09/53903/
https://opac.teikyo-u.ac.jp/iwjs0016opc/shinri22-04._?key=VTDDHB